奇想の陳列部屋(CABINETS OF CURIOSITIES)を読んでみた

 
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兵庫県の片田舎に住む20代男性。博物系のアンティークや昔の博物図鑑、古いラムネ瓶やサメの歯の化石が好き。どうぞ末永くよろしくお願いします。
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博物書を読んでみました。

といっても古書ではありません。

新刊です。

タイトルは、「奇想の陳列部屋」。

ヴンダーカンマーについて書かれた豪華本です。

ヴンダーカンマーとは、博物館ができる前にあった中世ヨーロッパ特有の貴族の文化のことです。

 

驚異の部屋とは

「驚異の部屋」とは、自然物、人工物、珍奇物、古代遺物、異国の物など、物という物を追及し、すべて揃え、集め、定義し、分類し、あらゆる隙間を埋めようとする飽くなき欲求だった。16世紀バロック期のヨーロッパ各地に生きたひと握りの王侯貴族から始まる「驚異の部屋」は、17世紀半ば以降に盛時を迎え、博物館や美術館に進化する一方、20世紀には「シュールレアリスム」にまで引き継がれる。

奇想の陳列部屋見返しより

驚異の部屋は、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパで作られていた、様々な珍品を集めた博物的な陳列室です。

いわば博物館の原型。ヨーロッパ独自の文化です。

日本ではこのような文化をへて、博物館ができたわけではないので、その基盤が薄弱だという説もあります。

20世紀のシュールレアリスムにも博物学の要素が見られると知り驚きました。

目次

  • 第1章 世界劇場
  • 第2章 陳列棚を開けて
  • 第3章 蒐集家ー「子供じみた老人」
  • 第4章 幻の陳列室ー18-19世紀
  • 第5章 復活ー珍奇の精神

内容

ふんだんに絵や写真を使っている、学術書であって、図鑑である。

読み物としてというより、巨大で高解像度の挿絵を堪能してほしい。

本のなかほどでは、挿絵に見開き2ページをそのまま用いているものもあり、

読者の好奇心と、珍奇の精神を駆り立てます。

特筆すべき点

著者が気にいったのは以下の内容です。

  • 巨大なワニが天井に吊るされている、インベラートの「博物誌」の木版画
  • ゲスナーの「動物誌」のなかの木版画のアナコンダのようなトカゲのような生物
  • オランダの画家の絵画や寓意画が部屋の壁という壁に掛けられている陳列室
  • 「自然の驚異の劇場」より、アムステルダムの宮殿の様な陳列室
  • 1620年ごろに、アウクスブルグで作られたクンストシュランク(美術戸棚)
  • 16世紀の工芸家の作った赤珊瑚が金箔をあしらった台の上に乗せられたものが壁に掛けられている写真
  • アルチンボルドによる皇帝を描いた野菜で作られた寓意画

なかなか文章で説明するのは難しいので、写真をいくつか載せてみます。

なお、すべて、「奇想の陳列部屋」からの転載です。

珊瑚とヴンダーカンマー

そこでは人の技が生み出したもの(芸術の傑作と驚異的な職人技)と神の技のあかし(自然の驚異、造物、奇跡の痕跡など)が隣り合っていた。この2つの領域がひとつになり、完全な世界を、あるいは小宇宙を形づくる。それは大宇宙を、この世すべてを反映している。

奇想の陳列部屋「珊瑚ー生と死のはざま」より

珊瑚彫刻はまさに、人工と自然が合わさってできた奇跡の造形物。

中世のヨーロッパの美術は絵画や彫刻など、すべて、このような隠された寓意をもとに製作されていたという。

もしかしたら、日本の俳句や短歌の掛詞などの文化と似ているのかもしれないですね。

シュールレアリスムとヴンダーカンマー

シュールレアリスムから現代美術まで、20世紀の芸術運動の数々に見られる驚異の部屋の美学は、1970年代以降、ヨーロッパ中で日常のインテリアに影響を与えてきた。

シュールレアリストの好む不調和なオブジェのテーマと、現代美術において重要な役割を果たしている空間、コンテクスト、枠組の問題に、こうした室内装飾を加えることもできる。

奇想の陳列部屋「復活ー珍奇の精神」より

シュールレアリスムとは、日本語で超現実主義と訳され、サルバドール・ダリに代表される、

その多くが現実を無視したかのような世界を絵画や文学で描き、

まるで夢の中を覘いているような独特の非現実感は見る者に混乱、不可思議さをもたらす独特の芸術方式で、

19世紀初頭から20世紀後半にかけてみられた。

この美術手法が驚異の部屋を復活させたのは、いうまでもなく、

「芸術は自然の模倣」という故人の言葉を本当の意味を再発見したからだったという。

感想

この本は、文章こそ、論説的・詩的で分かりにくいが、図と合わせることで、

感覚的に理解できればいいと思う。

この本を読んで、あなたも、「驚異の部屋」の入り口へと出かけましょう!

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